畏れ多くも、吹奏楽アレンジ その2

音源として聴かせてもらった「ブラジル」は、本場アメリカの、あるブラスチームの演奏だった。
本場のマーチングバンドと大学の吹奏楽部とでは、大きく違うところがある。それは楽器の構成だ。

 


マーチングを主として演奏しているバンドには木管楽器が存在しないし、吹奏楽にはない変わった金管楽器が入っている。(※木管楽器とはフルート、ピッコロ、クラリネット、サックスを指す。)
吹奏楽やクラシックで使用する金管楽器のベルは必ずしも前(客席の方)を向いていない。一番分かりやすいのは“ホルン”であろう。“ホルン”のベルは後ろを向いている。
他にもチューバは上を向いている。上を向いているといえば吹奏楽でのみ存在する“ユーフォニューム”もそうだ。


ま、このような相違点も考慮しながら、自分たちで演奏できるようにアレンジしなくてはならないのだ。

 

 

 

ステージマーチングで曲を演奏するには“楽器パート”以外に“フロント”と呼ばれる鍵盤楽器シロフォンマリンバビブラフォンなど)と“パーカッション”、この3つのパートが必要なのである。
私が任されたのは“楽器パート”であって、他の2つのパートは別の人が担当した。

 

まず最初にやらなければならないことは、一通り曲を耳コピして楽譜に落とすことだ。
次にその楽譜から各パート譜を作成していく・・・流れはこうだ。
今もそうだが、私は耳コピが得意ではない。
時間がかかりすぎる。
そこで、このアレンジをするにあたりクラブのメンバーの中から助っ人を招聘することにした。
一人はおそらく絶対音感のあるフルートのTさん。Tさんはピアノも得意で、知っている曲であれば即興で伴奏付きで弾いてしまう。
私に言わせれば、とんでもない才能である。

 


もう一人、私と同じパートで抜群にサックスが上手いM君。

彼とは当時一緒にバンドを組んでいたぐらい仲が良かった。音楽に精通しており、彼からはいろいろと学ぶことが多かった。
彼のエピソードを一つ。
一緒にバンドを組んでいたと書いたが、このバンドは主に「プリンセス・プリンセス」のコピーをしていた。
このバンドを始めると同時にM君は(以前から演ってみたかったそうだが)生まれて初めて、ベースを弾いたのだが、サックスが上手い彼は初めてのベースなのに器用に弾いていた。音の表現の仕方やリズム感などを応用する能力があるのだと思う。


そんなある日、プリプリの楽曲で「パレードしようよ」を演奏しようという話になった。M君にそのことを話すと彼は「その曲は出来ない。」と言った。
「なんで? ベース難しくないやん! 四分打ち多いし・・・」
「その四分打ちが問題やねん。 どう演奏してええのかがわからん・・・」
「えっ!? だって四分やで? 俺でも弾けるかも・・・」
「弾くことは簡単や。 どう表現したらええのかがわからんのや・・・」
「・・・・・」


結局「パレードしようよ」は演奏できなかった。


※ここでは登場人物全員が関西弁をしゃべっているが、本当のM君は和歌山は串本の人なので、実際は関西弁ではなかったことを補足しておく。