サックスから見た、「よろづあります。」 その5

CD「よろづあります。」のレコーディングは足かけ3年、都合3回に分けてすべて「STUDIO VOX」さんで行い、エンジニアの方も毎回同じ人にお願いをした。
レコーディングはまずドラムから始め、次にベース、あとはギターかキーボード、そしてフルートやサックス、最後にボーカルという順序で行った。
今回のようにきちんとしたレコーディングは私にとって初めての体験だった。

 


私の楽器はケースから出してすぐに吹ける訳ではない。
ウォーミングアップが1時間は必要なので、自分のレコーディングのおよそのスタート時間から逆算して、別のスタジオを押さえてそこで音出しをして出番を待つのである。


順番が回ってきたら、レコーディングルームに入る。
当然一人だ。
中はしーんとしている。
ガラス越しにエンジニアの方と一部メンバーの顔が見える。
ヘッドホンをしてレコーディングが開始する。


※「綴花」の場合  エン=エンジニア

 

私「えっと、サックスど頭からユニゾンで入ります。」
エン「では頭から流しますので、一度どんな感じか吹いてもらえますか? 一応、録っておきますね。」
「♪♪♪♪♪」
私「はい、ここまでです。 一度(今録音したのを)聞かせてもらっていいですか?」
エン「は~い、流します。」
「♪♪♪♪♪」
私「あ、これでOKですわ」
エン「え? いいんですか? もう一回ぐらい録りはってもいいのでは?」
私「じゃ、もう一度お願いします・・・」

 

 


※「月」 ピッコロとのソロの掛け合い部分の場合

 

(掛け合いソロ、最後にある上昇フレーズのところ、何度か吹くが上手くいかない)
私「すみません・・・ もう1回吹きます。」
エン「は~い、了解です。吹くのはそこのフレーズだけでいいですよ。」
「♪♪♪♪♪」
私「あっ・・・ もう1回吹きます・・・」
~これを何度か繰り返していると・・・ガラスの向こうでエンジニアの人とリーダーほか数人のメンバーが何やら話をしている。何を話しているのか、こちらには聞こえない。
エンジニアの人は手は動いているので、おそらく音の加工をしているのであろう。様子がわからないのはスゴく不安だ。


3分程経過しただろうか・・・
エン「後はこちらで何とかなりそうなので、最後のテイクをもらっておきます。」
私「・・・・・・ ありがとうございます・・・・」

 

 


レコーディングスタジオは1回につき大方6時間借りる。もちろん同じ時間分エンジニアの方も押さえる。
およそレコーディングにかかる時間は1パートにつき2間ぐらいとみて、6時間借りれば3パートぐらいのレコーディングが出来る計算だ。(2曲ぐらいをレコーディングするとしての目安)
よって、6時間を2回やることで全パートのレコーディングが終わるのだが、これで完成ではない。
ここから、各音の音量を調整したり、音にエフェクトをかけたり、タイミングや音程のズレを直したりとフィニッシュ作業が山のようにある。
特にドラムなどは曲ごとにどんな音にしていくのか、綿密に調整していく。
機械はすべてデジタルなので、あらゆる音の加工が可能な世の中になっている。正直、スゴい。


このような行程を経て、「わさび」オリジナルアルバム「よろづあります。」は昨年の末にアイビーミュージックさんのレーベルにて、発売に至ったのである。
少しでも興味が湧いた方は是非、ご購入いただきたい。
ありがたいことに、残数がそれほどないので、お早めに。


私もそれなりに長い間音楽活動を続けているが、今回、このように一つの“カタチ”として残せたことを誇りに思うし、良きメンバーに出会えたことや、またバンド活動に理解をいただいている家族を始め周りの方々に心から感謝をする次第である。

 

 


「わさび」がこれからも良い歳の取り方が出来きますように・・・