畏れ多くも、吹奏楽アレンジ その3

さて前述のM君だが、彼はシーケンサー付きのシンセサイザーを持っていた。
それは何かと言えば、データを打ち込めば自動演奏をしてくれるという機能が付いたキーボードである。
今のようにパソコンのない当時では、有り難いシンセサイザーだった。
このシンセがなければ非常に困ったことになっていたであろう


というのは、「ブラジル」の中間部分には、各パート1~2名の計12~13人ほどだけで演奏する、結構長い大ユニゾン

(同じフレーズを演奏すること)が待っていた。
演奏者はステージの中央に集まり、その周りをぐるっと他の部員全員で取り巻く、「ブラジル」最大といってもいい

見せ場である。
高音楽器から低音楽器まであるので、完全にユニゾンしても音厚は稼げるが、いくつかのパートはハモリを吹いても

らうことにした。
このハモリを入れた場合に綺麗に聞こえるかどうかをシンセのシーケンサーに打ち込み、自動演奏することで確認作

業をしたのだ。

 

おそらく専門の方が見れば、とんでもないスコアを作っていたのだと思う。
基本的なところで知らないことが多かった。
・各楽器は何調(何管)なのか?
・各楽器の出し易い音域はどの辺りなのか?
・同じ楽器内でも1st、2nd、3rd…とある場合、楽器によってその役割が違うということ
・ホルンはいろいろと他の楽器とちがうこと
どこまで上記のようなことを熟考して譜面を書いたのかハッキリと記憶がないのでわからないが、たぶん、ひどいも

のだっただろうと思われる。


そうこうしながら完成した「ブラジル」。
無事に定期演奏会での披露に至った。
どんな演奏内容だったのか? 大学時代のことなのに、実はほとんど記憶にない。

 


私が顔を出している高校の吹奏楽部OB会。
ここの現会長は通常のお勤め以外に音楽活動(演奏、作曲、編曲など)でも収入を得ているプロフェッショナル。OB

会で演奏する楽曲も譜面通り演奏しては面白くないとばかりに、いろいろと編曲を施すのだけれども、その内容が実

に玄人なのだ。
いつも、「さすがだなぁ・・・」と感心している。
その編曲がすばらしいという証に、OB会で演奏後にその曲を演奏させてほしいと他の大学の吹奏楽部からオファーが

あったりするぐらいだ。
これって、凄いことだと思う。

 

もう二度と私が吹奏楽のアレンジをすることはないと思うが、過去にチャレンジした経験は貴重だったと感じる。
直接的に今、役に立っているわけではないけど・・・