自己回想 その13

ここでテナーを買うことは、イコール、アルトに戻ることはないということを意味する。
「もう、いいんやな・・・ これでいいんやな・・・・」

そしてついに決断し、三木楽器へと足を運んだ。
大げさに聞こえるかも知れないが、私にとって楽器を買うということは、それ程決心のいることであった。
憧れの「セルマー」だった。
ネックもGP仕様にした。
サックスという楽器は大きく3つのパーツで構成されている。
口でくわえるところが「マウスピース」で他に当然本体(ボディー)がある。
この2つの間にあるのが「ネック」というパーツだ。

余談だが、サックスの音色(良い音を出す)は何を変えると変化すると思いますか?
それは、口に近いところから順番なのです。
つまり、一番は口そのもの。
専門的にはアンブッシュアといわれる、くわえ方と息の入れ方なのだ。
次に、マウスピース。(ま、リードやリードを留めるリガチャーも含めて)そして、ネックとボディ。
プロの方はビンテージのサックスでも、初心者用のサックスでも本体だけ変えただけの場合、どちらも良い音を鳴らされます。もちろん、音色は違いますけど、ええ音です。


サックスを買ったとき当然ネックは付いてくるのですが、それとは別にGP(ゴールドプレート、金メッキ)仕様を購入したのです。
ノーマルとGP仕様、どれほど音が違うのか!?
それは、サックス吹きにしかわかりません!(きっと吹く人の技量によって違うはず・・・)




テナーを新調するということは、私にとってはテナーと結婚した感覚だった。
購入後、楽しい新婚生活を過ごしていたのに、あれは次の年の8月ごろだっただろうか、運命の一言が待っていた。


OB会でご一緒する後輩でとてもサックスの上手な方がいる。
その彼が今度11月にある現役生の行事「アンサンブルコンテスト」にOBだけで構成されたサックスのユニットで参加してみないか?と言ってきた。
彼は基本、アルト奏者。
なので当然私はテナーだと思っていたら、「先輩、現役時代アルト吹いてはったんですよね。だったら、アルト吹いてもらえません? 自分はアルトとソプラノ吹きますので。」



「アルト」


「アルト」「アルト」・・・・



冬のソナタ」をご覧になっていただろうか?
覚えていますよね、ユジンが行方のわからなくなっていたジュンサンを街の中で見かけたシーン。
あの時、ユジンはサンヒョクとの結婚を決めていた。

なのにあの瞬間、自分を支えていた何かが音をたてて崩れていく・・・・